善光寺地震断層(小松原断層)のトレンチ
平成19年4月、長野市篠ノ井小松原地籍、光林寺の境内において善光寺断層のトレンチが行 われた。実施したのは名古屋大学・京都大学・立命館大学の合同研究チームで、見事な断層変位 構造が出現した。同チームは2年前にも、近くでトレンチ調査を実施したが、その際に出現した 断層の、より深部を観察するために今回の深いトレンチが掘削されたのである。

 善光寺地震(1874年)の際に動いた断層は 長野市の西側の山地が、盆地側に対してずり 上がるような、西傾斜の逆断層が想定されて いる。(図2のA) しかし、今回現れた断層は不思議なことに 東傾斜の逆断層(図2のB1)と正断層(B2) がペアーになったものだった。
 今回掘り出された断層の西側の黒い地層は出土した 土器から弥生時代のものと考えられ、断層の東側の白 い地層は放射性炭素年代測定結果から、16世紀以降 に堆積したと判断されるとのことである。 16世紀以降の大きい地震履歴を考えると、この断 層は善光寺地震の時に生じた可能性が高いという。 善光寺地震の記録を見ると、地表に裂け目やしわ状の 起伏ができたとの記述があり、今回発見された断層の 類がこの起伏を生じさせた、と考えることができるら しい。  東傾斜の正断層の落差は観察される範囲でも4~5 mあり、善光寺地震の時のずれの量(1~2mと推定 される)と比べると大きいため、複数回の変位である 可能性が高い。
(図4) トレンチの南側  右下に断層が見える。  なお、このページは、現地調査主担 当だった名古屋大学大学院環境学研究 科附属地震火山・防災研究センターの 杉戸信彦研究員から貴重なご助言をい ただいて作成した。感謝申し上げます。           <宮坂 晃>

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