坂室は茅野断層による変形地形が表れている所として有名である。北に向かって流れてきた宮
川が急に流路を南に向け、再び北に戻ってS字状に屈曲している。しかも流路が南に変化する部
分には独立した丘が存在しているからだ。このようなおかしな地形は茅野断層が左横ずれの活動
をしていると考えると説明がつく。先ほど述べた独立した丘は断層の東側に存在する尾根が切ら
れて移動してきたのだという。
(左上写真)国道20号線沿いから北方を見て撮影。断層は道路の下を通過している。道路の左側
の丘は、道路の右側の奧にある丘とつながっていたものが断層で切られて手前側に移動して
きた。
(中上図)横ずれ断層が平坦な面内で活動しても変位量が分からない。
(右上図)坂室付近の概念図。(緑色:丘 青:河川)もともと起伏がある地形だと断層活動
による変位量が読み取れる。丘が形成された年代と、変位量が判明すると、変位速度が求め
られる。坂室の地形はそうした変位量が分かる点でも重要な場所なのである。こうして求め
られた値は茅野市周辺で1000年で8mで、日本に無数に存在する活断層のなかでも変位速度
(活動度)は最大だという。
さて、茅野駅付近や木落し坂では断層を境に東側が隆起し西側が落ち込む動きをしていた。一
方で坂室では左横ずれの動きをしている。茅野断層は垂直方向の活動と水平方向の活動を併せ持
つ断層であるが、水平方向の動きのほうが垂直方向の動きより20倍以上大きい「左横ずれ断層」
らしい。
<参考文献>
東郷正美,1987,茅野市坂室付近の糸静線活断層系による変位地形,活断層研究4
藤森孝俊・太田陽子,1992,諏訪盆地の活断層詳細図,活断層研究10
信濃毎日新聞編集局,1998,信州の活断層を歩く,信濃毎日新聞社
(宮坂 晃)
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