仙丈岳は、赤石山脈(南アルプス)の標高3,033mの山で、長野県に属する南アルプスの最北の3000 m峰だ。幾つかの峰々が集まった独立した山塊をなし、そのたおやかな姿や高山植物が豊富なことか ら「南アルプスの女王」と呼ばれている。 この山は伊那谷からもよく見え親しまれている。「丈」とは長さの単位で、千丈は3000mであるか らまさに千丈岳になる。現在は南アルプススーパー林道を使えば日帰り登山も可能な山となった。 (写真下)駒ヶ根市からの仙丈岳。奥(右)は北岳(白根山)標高日本2位の山梨県の山
仙丈岳は山体全部が四万十帯に属し、しかも南ア ルプスに分布する四万十帯では最も古い時代に堆積 した地層(赤石層群)からなる。赤石層群は古日本 海溝で中生代白亜紀の中頃に堆積した地層だが、こ の中に、遠く南の海で堆積しプレートによって運ば れてきた、より古い(ジュラ紀)の異地性岩体を取 り込んでいる。[このことについては塩見岳参照] 全体としては粗粒ないし中粒の砂岩が主体で、塩 見や北岳が玄武岩・チャートなど硬い石から成るの に比べて山の趣が異なる原因の一つになっている。 地層は東に50度前後の傾斜を示し、ほとんど逆 転している。[このことについては釜無川参照]
地学的にこの山を有名にしているのが荒川岳や間ノ岳とともに山体に存在する氷河地形である。 山頂に小仙丈カール、藪沢カール、大仙丈カールと三つのカールを持ち、特に藪沢カールは北に 伸びる尾根の頂上部もUの字に削られていて、氷河侵食以外ではでき得ない地形を呈している。 (写真下左)藪沢カール (写真下右)小仙丈カール
(写真左)仙丈からの甲斐駒及び鋸 甲斐駒ヶ岳は四万十帯の地層に新生 代第三紀になって貫入してきた花崗岩 からなる。花崗岩は酸性の深成岩で色 が白いので山体が白く輝いている。 遠景は八ヶ岳、さらに遠景に浅間山 が浮かぶ。甲斐駒ヶ岳と八ヶ岳の間に 糸魚川静岡構造線が通過している。
(写真左)仙丈から鳳凰三山方面 鳳凰三山も山塊のほとんどが甲斐 駒と同じ花崗岩から成るが、登山道 には花崗岩によって接触変成作用を 受けた変成岩も見られる。地蔵岳の 花崗岩のオベリスクは有名だ。 (写真の最も左側のピーク)