伊那から飯田まで周囲が開けた部分を流れてきた天竜川は天竜峡に至ってぐっと川幅が狭まり 渓谷状になる。周囲に岸壁が連なり、有名な天竜船下りで知られる観光地になる。 天竜峡は景色のみならず地学的にも面白いものが見られる。
天竜峡一帯は領家変成帯に属していて、領家帯には主に花崗岩や高温低圧型の変成岩や片麻岩 などが分布している。天竜峡には主に花崗岩が露出していて、ここの花崗岩は「天竜峡花崗岩」 と呼ばれ、特徴としては、鉱物に一定の配列が見られることや、捕獲岩(ゼノリス)が多いこと である。 (上写真左) 天竜峡花崗岩。大きい白い鉱物はカリ長石(正長石)、黒い縞の部分は黒雲母 や角閃石から成る。上下方向に鉱物が並び替えを起こしている。 (上写真右) 片麻岩と花崗岩の接触部。(白い部分が花崗岩、黒い部分が片麻岩)小さい露 頭では、片麻岩の中に花崗岩が貫入してきているのか、片麻岩が捕獲岩なのかわからない。
胡射(こや)橋から見た天竜峡花崗岩。 川の流れる方向に沿って節理または断層が 何本も入っている。 <参考文献> 地学団体研究会(1995)信州の地質めぐり, (郷土出版社) 降旗和夫編(2001)改訂長野県地学のガイド 「中部地方Ⅰ編集委員会(1998)日本の地質 「中部地方Ⅰ」,共立出版 中部建設協会(1984)天竜川上流域地質図 ( 宮坂 晃)