上田盆地の河岸段丘
 上田盆地は中央部を千曲川が流れ、千曲川の両側にはいくつかの段丘面が存在している。段丘面 は盆地内に流れ込んでいる河川の侵食・堆積作用のために平坦な面が形成されるのであるが、河川 が削ってできた侵食面と堆積によって形成された堆積面とがある。同じ時代に同じ原因によってで きた面には同一の名前が与えられる。上田盆地では地形的に高い方から姫子沢面、栗林面、虚空蔵 面、深井面、染谷面、上田面などがある。(面の名称については、上の写真をクリックする)  一般には高い所の面ほど盆地の縁の基盤岩に近い位置に存在し、しかもできた時代が古い。従っ て上田盆地では姫子沢面が一番古いということになる。  最も高位段丘面である姫小沢面は侵食面で、この下の栗林面は堆積面であるが、これらの面の上 には中期更新世に積もった広域テフラ(火山灰)であるクリスタルアッシュ(crystal ash) が乗っ ているのでそれ以前にできた面である。これらより下位の面にはクリスタルアッシュは乗っていな い。  虚空蔵面は古期上小湖成層の堆積面から成る。(上小湖成層の項参照)
 深井面と染谷面は、古期上小湖成層の後にできた新期上小湖成層の上に神川(かんがわ)が烏帽 子岳方面から運び出した膨大な量の礫が堆積してできた堆積面だ。この面は今から2万年ほど前に 形成されたと考えられる。上の写真は染谷層の礫岩。  上田面は染谷面を千曲川が削り込み、その上に上田泥流が堆積してできた堆積面だ。この面の一 部は千曲川左岸でも見ることができる。上田泥流の発生が約1万年ほど前とされているので、この ころに完成したのだろう。1万年前といえば古代人が狩猟生活を営んでいた時代だが、上田盆地を 埋め尽くした泥流をどのように見たのだろうか。地学を学ぶと、自分の住んでいた場所で過去に何 が起きたかわかる。そして、それはこれからも起こるという事を知ることだ。  現在の上田盆地では上田面の更に下に、現千曲川河床面がある。
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